【開催報告】「2021年度アンデス・コレクション研究懇談会」を開催しました
文明研究所とマイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)では10月23日に、湘南キャンパスの同センターをメーン会場にオンラインと併用で「2021年度アンデス・研究懇談会」を開催しました。両研究所では、本学が所有する「アンデス・コレクション」を高度な光学機器を使って分析し、古代の技術や用途の解明を目指す研究を進めています。今回は文学部文明学科の吉田晃章准教授(文明研究所研究員)が進行役を務め、プロジェクトに参画する学内外の研究者や学生が研究の進捗状況や成果を発表しました。
開会にあたり文明研究所の山本和重所長があいさつし、アンデス・コレクションの概要について説明。「2019年からさまざまな先生方の協力を得て、コレクションの分析・活用が進んできました。文理融合で取り組む東海大ならではの研究活動について、今後さらに発展させていければ」と語りました。研究発表は午前・午後の二部制で実施しました。初めに、立命館大学環太平洋文明研究センタープロジェクト研究員の市木尚利氏と吉田准教授が、紀元後8世紀から10世紀ごろに作られたワウラ様式の土器について、MNTCのX線CTスキャンを使い分析した製造・成形方法を報告。続いて医学部基礎医学系分子生命科学の松前ひろみ助教と文学部歴史学科考古学専攻4年次生の鴨下真由さんが、土器や絵画に描かれた人の顔を3Dスキャナで撮影し制作したデータベースを紹介し、古代エジプトで描かれた作品との比較検証結果を説明しました。
午後の部では、教職資格センターの篠原聰准教授と岡山県立大学デザイン学部准教授の真世土マウ氏、映像制作会社「FLYING IMAGE」の亀井岳氏が、神奈川県立平塚盲学校の生徒を対象に取り組んでいるワークショップについて報告。アンデス・コレクションの「笛吹ボトル」のレプリカ製作など、活動内容を報告しました。続いて吉田准教授が「ナスカ文化の骨製縦笛の分析-年代測定と形態分析から-」と題して、縦笛の年代測定結果や北海道大学総合博物館江田真毅准教授による形態分析結果を報告し、本学イメージング研究センターの粟野若枝技術員によりデータ処理で復元された3Dレプリカの音色を紹介しました。さらに真世土氏と東京大学総合研究博物館助教の鶴見英成氏と取り組む笛吹きコップの成形と構造研究について、活動内容や進捗状況を報告しました。最後に、文化社会学部アジア学科の山花京子准教授と工学部応用化学科の秋山泰伸教授が、アンデス・コレクションのガラスビーズの化学組成を分析した成果を解説。秋山教授の研究室で行った復元実験の様子や、作品の製作年代などの考察を紹介しました。午前・午後の部ともに、発表後にはディスカッションを実施。参加者たちがそれぞれの専門分野から知見を述べ、活発に意見を交わし今後の研究展望を語り合いました。
最後にMNTC所長の喜多理王教授が閉会のあいさつを述べ、「学内だけでなく、他大学や各研究機関の方々にも加わっていただくことで研究の幅が広がっていると感じています。吉田先生のリーダーシップの成果であり、MNTCとしても継続して協力していきたい」と話しました。